友を悼む

「飲酒」 陶淵明
秋菊有佳色 宴露掇其英
汎此忘憂物 遠我遺世情
一觴雖獨進 杯盡壺自傾
日入群動息 歸鳥趨林鳴
喟然東軒下 聊復得此生
富永才助君、愛称「お富さん」で知れ渡っていた久栄会前会長の君には親交の深いそして優秀な友人が多数おられる中で、私が追悼の拙文を綴る借越をお赦し願いたい。想えば平成14年の早春ニューオーサカホテルで開催された久栄会全国幹事会で一際強いオーラを発していた君が全員一致で次期会長に選出された。後日談「あの時は背中の全面から汗が吹き出たぞ、たのんまっせほんまに!」君は卒業後母校病院に残ったが、歯科医不足の社会情勢で郷里に帰り地域歯科医療に専念し、素晴らしい伴侶と子達に恵まれつつ、持ち前の重厚で包容力に溢れる人柄は患者達にも慕われ、滋賀県歯科医師会副会長、同連盟副会長を務める傍ら、昭和58年には研修を続けていた解剖学で学位を取得し、また幾多の表彰の極めとして平成21年秋期の叙勲で「旭日双光章」を授かり栄誉に輝かれた。君はリーダーとして大切な決断力にも優れ、久栄会会長として卒業45周年記念総会を見事成功させ、長年続けていた年会費の徴収を休止させたことは記憶に新しい。
業界、学界を問わず屈指の酒豪で通る君は半面大の愛妻家で久栄会でもいつも奥様同伴、旅行の車中で仲良く座る二人の間に必ず一升瓶という光景になるのは困ったものだ。冒頭の詞は平成20年高山での総会の後、新聞紙
上で見つけた陶潜の詩で、早速君に送ろうと思ったらすでに君は禁酒に入ったと聞き及び手元に置いてあったもので、今改めて君に捧げよう。3行目「独り酌で酒を愉しんでいるのに、杯の酒を飲み干すとなぜか徳利は自ずと傾いて酒をついでくれる」。正に君の言いそうな言葉だ。目を閉じれば君の顔が浮かんでくる。真面目な顔をしてこの惚けた“セリフを口にし、そしてニャと笑う。鳴々君は今何処で飲んでいるのだろう…。
平成23年12月14日ご逝去 心よりご冥福をお祈り申し上げます。倶会一処
(池田英綱記)
追伸
平成23年12月15日 管野鉄也君 尼崎市
平成24年2月27日 酒井孝君 志摩市
平成24年3月19日 谷口昌之君 さつま市
ご親族様でしめやかにご葬儀を終えられ後日ご報告を頂いた方々に、謹みてご冥福をお祈り申し上げます。
久栄会