令和元年7月28日(日)、2019年度ポストグラデュエートコース3コースが、講師として宝塚市にて開業の芦田貴司先生(大39)と、神戸常盤大学短期大学口腔保険学科講師であり歯科衛生士の澤田美佐緒先生を招いて開催された。受講者数は、学生1名を含む38名であった。
芦田先生は、早くから在宅医療に精通され介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格もお持ちで、地域における訪問歯科診療のあり方を深く理解されている。また、澤田先生は、衛生士として市民病院にて15年間勤務後、ケアマネージャーの資格を取られ長野県にて長らく介護予防活動に従事し、現在は大学講師として後進の指導とともに現場で訪問歯科衛生士として活躍されている。このような現場を熟知し、多くの経験を積まれた講師によるコースは、訪問歯科診療を始めようとする受講生からもっと本腰を入れて取り込もうとする受講生まで、得るものの大変多いものとなった。
コースは、芦田先生の講義から開始された。訪問歯科診療を始める場合の医院全体での理解の重要性について、居宅系と施設系の違いや医療保険制度と介護保険制度について、ケアマネージャーとの関わりと他職種に対する報告や文書記録の重要性などについて詳しく解説された。さらに、現在歯科が医科を含めた他職種から必要とされ始めているこのチャンスを逃さず行動すべきことを力説された。その後の澤田先生の講義では、衛生士としてホームである医院内では自分vs患者の1対1の関係であるのに対して、訪問歯科診療ではアウェイであると同時に自分vs患者・介護者・他職種の1対多の関係であることや、患者や介護者の状態にあわせて衛生士の立ち位置を決めて行動すること、患者の生活パターンから訪問計画を立てること、口腔のケアマネジメントは患者のリスク程度に合わせて進めること、介護者や訪問看護師などの口腔ケアに係わる方には、無理のない指導をすることなどを講義された。どちらの講師も歯科医あるいは衛生士として患者を治療やケアをするだけでなく、介護者やその周辺関係者とうまく連携し情報交換することがいかに重要であるかについて詳しく説明された。
午後からは、芦田先生が「訪問診療実践編」をわかりやすく講義され、嚥下障害に対する訓練法に関しても症状に応じた実際に効果のある訓練法を紹介して頂いた。講義後、VE検査機器を用いた嚥下障害の検査をリアルなマネキンで体験する実習と、口腔機能低下の検査機器の実習が行われた。
実習終了後質疑応答となったが、熊本から来られた受講生は、これまで何度も医療保険などの講習を受けたが今回のものが最も分かりやすく、頭がクリアになったという感想を述べられた。訪問診療はアウェイで行動することで生じる不安から積極的になれないことが多いが、今回のコースは、そのような不安を払拭してくれる大変有意義な講習会であった。
(PGC委員 大39回 仲西健樹 記)