開講報告

平成28年度ポストグラデュエートコース レギュラー3コース

顎関節症のパラダイムシフト~ビデオで学ぶ~すぐに役立つ「アゴの痛みが取れるセルフケア」

 平成28年9月7日、本学天満橋学舎西館7階共用会議室において標記講習が行われた。
 従来より顎関節症は難治性で、われわれ臨床医にとって一種ブラックボックス的な疾患であった。非常に専門性の高い医療行為との認識があり、多くの来院患者に適切な処置・指導が行えないジレンマがある。今回はこの分野に造詣の深い日本歯科大学附属准教授 顎関節診療センター長である原 節宏(はら せつひろ)先生をお招きし、「顎関節症のパラダイムシフト~ビデオで学ぶ~すぐに役立つ「アゴの痛みが取れるセルフケア」」と題して、非常に有益な講習会が開催された。
 まず、顎関節症の概念の変遷について解説があり、1990年代以降の「生物心理社会モデル」として顎関節症を捉える重要性について強調された。様々なエビデンスから現在、顎関節治療で最優先されることは非侵襲的なケアであり、経過観察、咬合治療、スプリント療法などの弊害についてスライドをもとに解説された。次に新しい病態として「筋膜痛」の提唱があり、国際歯科学会(IADR)での調査では顎関節症の原因の78%を筋膜痛がしめていると言われていて、筋膜痛の制御が非常に重要である旨、お話があった。
 その後、休憩をはさみながらハンズオンによるセルフケアの実習が行われ、原先生ご監修のDVDを見ながら、受講生自身がセルフケアを行った。丁寧にインストラクションしていただき「すぐに役立つ」の意味を受講生も理解できたようであった。
 昼食後は、筋膜痛の病態についての解説や筋膜マッサージの実践・アロマ療法の併用効果などの講義のあと、各自ヨガマット・アロマオイル・テニスボールを用いて筋膜リリースの実習を行った。日頃診療で疲れた心身がほぐされ、受講生にとっても非常に有意義なコースであったことは否めない。最後に日本歯科大学病院での治療の流れや費用について説明していただき、今後の歯科臨床においてわれわれでも取り組める,ということが実感できた講習会であった。
 当日は20名の受講生が講習を修了し、非常に満足感の高いコースとの評価で、本学同窓会が主催するポストグラデュエートコースのバリュー感を再認識した1日であった.

報告者:P.G.C. 副委員長 杉岡伸悟(大35回)