開講報告

平成21年度ポストグラデュエートコース 1コース

「ぺリオドンタル・ マイクロサージェリー」 歯周外科手術の新基準を提言する

午前中に両講師による講演があり、午後からは松川先⽣によるマイクロスコープを 使ったデモと実習がありました。
講習会の参加者は⼤学25回から⼤学52回卒迄の17名の参加者があり⼤阪⻭科⼤学の出⾝者で占められました。
当⽇は前⽇の⾬もあがり秋晴れの爽やかな⼀⽇となりました。朝早くから実習に使う各社のマイクロスコープが5階の講義室に搬⼊され設置されたのは壮観でした。
協賛各社は、GC、タカラ、⽩⽔、マニー、三鷹、モリタ、ヨシダでした。
早朝の設置から後⽚付けまで本当に有難うございました。

平⽥先⽣の講義の内容を簡単にご紹介しますとWhat is microdentistry というマイクロスコープの原点から説き起こされました。
まず最初はルーペから使い、それから⾼価なマイクロスコープを使う様にすれば順応しやすいとのアドバイスでした。まだまだこれから発展する分野ですので、⼤学での基礎研究、⾏政の協⼒のもとで、post及びundergraduateの教育に組み込む必要があり、⼜、各マイクロスコープの製造業者の研究と機械の改善及び、それを使う臨床家が多くでることが、これから必要とされるとの事でした。⼜、マイクロスコープの幅広い⽤途についても説明されました。
⻭内療法や外科処置及び補綴などで⽤途が広がると共に専⽤のチップが考えられ⾊々な機能をつける事が可能になりつつあります。これからの提案として⻭科以外の医科の外科、⽿⿐科眼科といったマイクロスコープを使う他科との交流が⼤事であるとのことでした。それにより将来、⻭⾁の中の⾎管をつなぐといった様な夢の様な事が可能になるかもしれないとの御⽰唆を受けました。

次に松川先⽣のご講演の内容をご紹介致します。
まず先⽣がmicrosurgeryの世界に⾜を踏み⼊れるきっかけになったのは、矯正科からの依頼で矯正後の⻭⾁退縮を根⾯被覆術で何とかできないかという事でした。それから先⽣はアメリカのDenis A.Shanelec先⽣のもとで研修を受けられました。マイクロスコープを使った⾊々な症例のスライドを⾒せられました。
⻭周外科におけるmicrosurgeryを使った根⾯被覆術、⻭⾁乳頭形成術、⻭冠⻑増⼤及び⻭槽提増⼤術などperioのmicrosurgeryを使った症例を⾒せられました。

⼜、幅広い臨床への応⽤例があり⻭内療法では⻭根端切除術や、超⾳波を使った折れたファイルの除去等の症例をみせられ、修復はレジン充填、ラミネートベニア冠のマージンテクニック、ジルコニアのフレームの試適、セメント特にレジンセメントの除去、メタルコアの除去、補綴物のマージンの適合の確認等の症例をあげられました。⼜、インプラントではソケットリフトやサイナスリフトの症例の提⽰と、サイナスリフトでは後上⻭槽動脈からの出⾎が多いので注意が必要であるとの事でした。⼜、Shanelec先⽣のもとでは抜⻭即時埋⼊のインプラントは100%の成功率でそれには不良⾁芽の掻爬が必要であるとの事でした。以上が午前中の講演内容の⼤旨で、午後からは松川先⽣がマイクロスコープを使ってデモをされ、periodontal microsurgeryの基本的な切開及び縫合をラバーダムを使って⾏われました。参加者は真剣に実習を⾏っていました。かなり繊細で精密なテクニックが必要とされるみたいですが、松川先⽣はD.A.Shanelec先⽣の「microdentistryは順序だてられた⾜算である」の⾔葉や、福島先⽣の「step by step」とか外科で成功する為には「50%の忍耐が必要である」との⾔葉を紹介されました。⼜、periodontal microsurgeryの⻑所は術後の疼痛が少なく治癒が速く、術野が明るく拡⼤されるので細部へのアプローチが可能であるという事であり⽋点はmicroscopeの機材や専⽤器具を買わないといけないし、かなりのトレーニングをしないと⾁眼で⾏う程のスピードではできないと考えられます。

以上が当⽇の内容の⼤旨であります。ご講演されました平⽥先⽣、松川先⽣に感謝の念を捧げますと同時に、これからのご活躍をお祈りします。

最後にまとめさせいただきますと、microscopeを使った治療はこれからどんどん発展する分野であり、⼿先が器⽤であり、なおかつ繰り返し練習する忍耐強さ、精密さを要求されるという⾯では、⽇本⼈の特性に合致した所があり、我々⽇本⼈の⻭科医の優位性が⼤いに発揮される分野ではないかと考えます。その為には、やはり⻭内療法、⻭周外科⼿術、補綴等を⾁眼でしっかり治療できる技術を⾝につける事が⼤前提であると思います。

ポスト委員⻑ 藤 野 明